パソコンやインターネットをどう教えるのかということを、我々はこれまで本当に研究してきただろうか。パソコン、インターネット、そしてプログラミングに関する本は溢れている。自分で学習しようと思えば情報は幾らでもある。
それに比べ、教え方の方はどうだったであろうか。パソコン教育と言っても、結局、パソコンを使うだけの話でなかったか。パソコンを前にすると、教育を忘れてしまい、いかに使えるようにするかというだけで精一杯でなかったか。教える側も学ぶ側も、パソコンを動かすということに目を奪われ過ぎたのではないか。そうしたことに偏っていなかったか。
これは、パソコンは他の学問と異なり、実地に本物に触れられることが徒になっているのである。パソコンは模擬的なものに頼る必要はないし、パソコン自身が人間の相手もしてくれる。しかし、これに気を取られて教育が疎かになることもあるわけである。
使えるようにする教育ももちろん必要があるが、それが普遍的なものでなかったらどうだろう。本質的なことを教えているつもりで、パソコンやソフト固有のことを教えて来なかったか。今考えてみると、まさか固有のこととは思っていなかったという方もいるかもしれない。第一、固有なことを教えないとパソコンが動かないではないかと思えるかもしれない。
パソコンを取り巻く状況はどんどん変わる。状況がそんなに速く変わらなければ、固有なことでもある程度価値を持った。しかし、1年前, 5年前, 10年前の状況を見れば、今とは随分違う。そうした過去の固有な情報は応用も利かず無価値になっている。そうした状況をどう克服するかが本書の課題である。
この本には、パソコンの機種名やソフトの名前、固有名詞は出てこない。OS やプログラミング言語の名前も出てこない。それでいて、パソコン, インターネット, プログラミングの教え方を述べているのである。具体的なものの情報は幾らでもある。入手もし易い。それと本書を結び付けるのはそれほど難しい作業ではない。
逆に、目まぐるしく変わる具体的な情報に出会って迷った時は、いつでも本書を開いて幹となる知識を確認して頂きたい。本書に書かれていることは、時間の風雪に耐える普遍的な知識であり、パソコン・インターネット・プログラミングの底本というべき内容となっている。
重視したのは、誰でも読めるように、解説のない孤立した専門用語がないよう配慮したことである。そのため索引を充実させ、漢字はもちろん欧文にもルビを振った。
本書は教え方を述べている本であるが、それは学び方も述べていることになる。もちろん、学ぶ場合は教えてくれる人が傍にいるわけではないので、本書だけでコンピューターを学ぶのは無理がある。しかし、その良い方針は与えられることだろう。
本書の出版にあたっては、共立出版(株)の石井徹也氏、坂野一寿氏、小山透氏、印刷所の(株)加藤文明社の原田吉雄氏、細川由紀夫氏に大変お世話になった。また、妻の里美には、分かり易くて かわいいイラストを描いてもらった。
本書のホームページは http://www.hir-net.com/book/book22/ に設けた。一度アクセス頂ければ幸いである。
2000年1月1日
Hirabayashi Masahide
平林 雅英