本書は先に刊行された『Windows95プログラムを10倍簡単に作る[C言語版]』の続刊である。主力開発言語をC言語から C++ に変え、より踏み込んで Windows95プログラミングを解説している。
姉妹編の『Windows95プログラムを10倍簡単に作る[C言語版]』の目的は 5倍は手間が掛かると言われる Windows95プログラミングの常識を覆し、簡単に 32bit のグラフィックス・プログラムを作ることであった。Windows95 にプログラムを移植したい人、プログラミングをあきらめていた人、そして、これからプログラミングを始める人に最適な内容としていた。
本書『10倍強力』の目的はプログラムの拡張である。プログラムをより強力に拡張することにある。そのため、C言語ではなく、C++ を使用する。例えば多重定義やテンプレートと言った C++ の最新機能を使用すれば、8色16色系とフルカラーの扱いを調和させることが出来る。既に作られた関数の引数拡張なども簡単に出来る。
1972年のC言語誕生に続き、C++ が誕生したのは 1982年である。C++ が誕生して、既に相当の年月が経過しているのに、C++ はまだそれほど普及していない。普及が遅れているのは C++ の様々の機能をどう生かして行ったらよいのか分からないというのが 1つの理由であろう。
C++ のオブジェクト指向の面ばかりが強調され、面倒で実用的でないという印象を持たれてしまったのではなかろうか。本書では C++ の各機構を整理し、うまく使い分ければ非常に強力なプログラミングが簡単に出来ることを示している。そのため、Windows95プログラミングを始めたいが、ついでに C++ も学んでしまいたいというCプログラマに最適な内容となっている。
姉妹編の書名『10倍簡単』は後から付いた名前だけのものではなく、執筆当初から10倍簡単を目指していた。本書の『10倍強力』も同様である。
MS-DOS や UNIX で作った多くのプログラムを抱え、これをより強力なものにしたい場合、まずは姉妹編『10倍簡単』に従ってそのまま Windows95 に移植するとよい。移植が出来たなら、本書『10倍強力』に従って徐々に拡張すればよいだろう。
Windowsプログラムの基本や、10倍簡単にプログラムを作れる原理などは姉妹編『10倍簡単』で述べられている。姉妹編『10倍簡単』により、一通りのことを身につけた上で、本書『10倍強力』に取り掛かるのが近道である。新しい OS でプログラミングをする以上、まずは Windows95用C/C++コンパイラを選ぶこと、そしてそのコンパイルの仕方からやらなければならず、これらは姉妹編『10倍簡単』で解説している。
本書は姉妹編『10倍簡単』及び本年正月に発行された『ANSI C/C++辞典』(共立出版)と同様、TeX(テフ)というコンピューター組版言語システムを使用し、筆者自らが版下作成まで行っている。執筆と編集は同時進行であり、最新の情報をいち早く提供できた。
本書の出版にあたっては、『ANSI C/C++辞典』『10倍簡単』に引続き、共立出版の坂野一寿さんに大変お世話になった。また、松岡里美さんには筆者の難しい話を良く聞いていただき、分かりやすくて かわいいイラストを描いてもらった。
本書で使用する C/C++ の用語は『ANSI C/C++辞典』に準じているので、不明の点は参照していただきたい。
平成8年(1996年)4月17日
Hirabayashi Masahide
平林 雅英